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請求と取決めを進める

公正証書があるのに養育費が支払われないとき、まず確認する点

公正証書があるのに養育費が支払われないとき、まず確認する点の要点をやさしく表したイラスト

先に知る結論:公正証書の内容確認が第一歩

何から始めればよいか迷いますよね。まずは、手元の書類を確認してみましょう。

養育費の支払いが滞った場合、手元にある公正証書の内容を正確に把握することが最初のステップです。公正証書に「強制執行認諾文言」という記載があれば、裁判所の手続きを通じて相手方の財産を差し押さえる強制執行を申し立てることができます。しかし、公正証書があるからといって自動的に支払いが再開されるわけではありません。まずは、手元の書類が強制執行の要件を満たしているか、支払期限や相手方の情報が正確であるかを確認します。

養育費の取り決めを公正証書で交わしたにもかかわらず、相手方からの支払いが滞るという状況は少なくありません。公正証書は法的な効力を持つ書類ですが、それでも未払いが発生した場合には、次のステップに進む前にいくつか確認しておきたい点があります。こちらでは、公正証書があるにもかかわらず養育費が支払われない場合に、まず確認したい事項と、その後の具体的な対応策について、日本の家事法・民事執行手続の観点から解説します。

公正証書とは何か、その特徴と限界

公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公文書のことです。養育費の取り決めを公正証書で行う主な目的は、将来の未払いに備えることにあります。当事者間だけで作成した合意書や念書とは異なり、公証人が関与して作成されるため、その内容の真正性が高く評価されます。

債務名義としての役割

公正証書に特定の文言が含まれている場合、それは「債務名義(さいむめいぎ)」として扱われます。債務名義とは、裁判所や公証役場で作られた、差押えを進めるための正式な書類のことです。通常、強制執行を行うためには裁判を起こして勝訴判決を得る必要がありますが、債務名義となる公正証書があれば、その手間を省いて直ちに強制執行の手続きに移行することができます。これにより、未払いが発生した際の対応がスムーズになります。

公正証書の限界

一方で、公正証書があれば養育費を回収できると誤解されることもありますが、相手方に差し押さえるべき財産(給与や預貯金など)がない場合や、公正証書の内容に不備がある場合には、強制執行の手続きを進めることが難しくなります。また、相手方の現在の住所や勤務先が不明な場合も、手続きに支障をきたすことがあります。公正証書はあくまで手続きを円滑にするための書類であり、相手方の支払い能力そのものを生み出すものではない点に留意してください。

まず確認したい重要事項(確認手順)

公正証書があるにもかかわらず養育費が支払われない場合、次の行動に移る前に、手元の公正証書を改めて確認し、以下の点に注意を払うと安心です。これらの確認を怠ると、その後の手続きがスムーズに進まない可能性があります。

1. 強制執行認諾文言の有無

まず確認するのは、公正証書に「本契約に基づく金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨を陳述する」といった強制執行認諾文言が含まれているかどうかです。この文言がなければ、公正証書だけでは直ちに強制執行を申し立てることはできません。その場合、別途、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てるなどして、改めて債務名義を取得します 。手元の公正証書にこの文言が記載されているか、しっかりと確認してください。

2. 支払期限と未払いの事実の確認

次に、支払期限と未払いの事実を確認します。公正証書には、養育費の支払期日や支払方法が記載されています。相手方がその期日を過ぎても支払いをしない場合が未払いとなります。支払期日が明確でない場合や、条件付きの支払いになっている場合は、未払いの事実を客観的に示すことが難しくなる可能性があります。また、支払いが一度きりの合意であったのか、毎月継続する合意であったのかも確認します。未払いの金額がいくらになっているのか、どの期間の支払いが滞っているのかを正確に把握することが、今後の手続きの基礎となります。

3. 相手方表示の正確性

ここで確認したいのが、相手方表示の正確性です。強制執行を行う際には、相手方(債務者)の氏名、住所などの情報が正確である必要があります。公正証書に記載されている情報が、現在の相手方の情報と異なっている場合、強制執行の手続きを進める上で追加の調査や手続きが必要になることがあります。相手方が転居している場合や、氏名が変更されている場合は、住民票や戸籍謄本などを取得して現在の情報を確認します。

4. 正本または謄本の確認

強制執行を申し立てる際には、公正証書の「正本(せいほん)」または「謄本(とうほん)」が必要です。公正証書は通常、原本が公証役場に保管され、当事者には正本または謄本が交付されます。手元にあるのが単なるコピーではなく、公証役場で発行された正式な正本または謄本であることを確認してください。もし正本や謄本を紛失してしまった場合は、作成した公証役場に再交付を申請することができます。

5. 時効の状況

養育費には時効が存在します。当事者間で支払時期や金額を取り決めた養育費の未払い分は、各不払い・滞納発生から5年で時効が成立します。公正証書による取り決めであっても、当事者間の協議に基づくものであれば時効は5年となります 。未払い期間が長期にわたる場合は、時効によって請求権が消滅している部分がないかを確認することが大切です。なお、内容証明郵便による時効の完成猶予や更新などの個別の期限や効果については、事情によって結論が変わるため、迷ったときは弁護士へ確認してください。

確認事項 確認するポイント 備考
強制執行認諾文言 「直ちに強制執行に服する」等の記載があるか ない場合は調停等の手続きが必要
支払期限 期日が明確に定められているか 曖昧な場合は未払いの特定が困難
相手方の情報 氏名や住所が現在と一致しているか 変更がある場合は追加の手続きが必要
書類の種類 正本または謄本であるか コピーでは強制執行の申し立て不可
時効 支払期日から5年が経過していないか 経過している場合は請求できない可能性あり

強制執行の手続きと注意点

公正証書の内容に問題がなく、相手方の財産が特定できている場合は、裁判所に強制執行を申し立てることができます。強制執行は、相手方の財産を差し押さえて、そこから未払い分の養育費を回収する手続きです。

給与の差し押さえ

相手方の勤務先が分かっている場合、給与を差し押さえる手続きを検討します。養育費の場合、原則として手取り額の2分の1まで差し押さえることが可能です。ただし、手取り額が月66万円を超える場合は、33万円を除いた額が上限となります 。給与の差し押さえは、一度手続きを行えば、未払い分だけでなく将来の養育費についても継続して差し押さえることができる場合があります。

預貯金の差し押さえ

相手方の口座がある金融機関と支店名が分かっている場合、預貯金を差し押さえる手続きを検討します。預貯金の差し押さえは、申し立てた時点での口座残高が対象となります。そのため、口座に残高がない場合や、別の口座に資金が移動されている場合は、回収が難しくなることがあります。

財産情報が不明な場合

相手方の財産情報が不明な場合は、裁判所の「第三者からの情報取得手続」などを利用して、勤務先や口座情報を調査する制度があります。この手続は、原則として相手方について3年以内に財産開示期日が実施されていることが要件となります 。ただし、これらの制度を利用しても、勤務先や財産が必ず判明するわけではありません。

2026年4月以降の制度変更について

2026年4月1日以降に発生した形成養育費については、子の数×月額8万円を上限として先取特権(さきどりとっけん)が付与される制度が導入されます 。先取特権とは、他の債権者よりも優先して支払いを受けることができる権利のことです。また、2026年4月1日以降に離婚または認知があり、養育費の取り決めがない場合、主として子を監護する親は、取り決めができるまでの暫定的な養育費(子1人につき月額2万円)を請求できる「法定養育費制度」が導入されます 。ただし、法定養育費は最終的な適正額を決める制度ではなく、先取特権も優先・満額回収を保証する制度ではありません。

強制執行が困難な場合の対応

公正証書に強制執行認諾文言がない場合や、相手方に差し押さえるべき財産がない場合は、直ちに強制執行を行うことはできません。この場合、以下のような対応が考えられます。

履行勧告・履行命令

家庭裁判所での調停や審判で取り決めた養育費であれば、家庭裁判所から相手方に対して支払いを勧告したり、命じたりする制度を利用できます 。ただし、公正証書のみでの取り決めの場合は、この制度は利用できません。

養育費請求調停の申し立て

公正証書に強制執行認諾文言がない場合は、改めて家庭裁判所に養育費請求調停を申し立て、債務名義を取得します。調停では、裁判所の調停委員を交えて話し合いが行われます。なお、再婚、進学、収入変化等の事情変更があっても、養育費が自動的に変更されるとは限りません 。

破産手続きとの関係

相手方が自己破産をした場合でも、養育費は非免責債権(ひめんせきさいけん:破産しても支払い義務が免除されない債権)に該当します 。ただし、個別の回収可能性や配当、時期については断定できませんので、個別の状況に応じて弁護士へ確認してください。

手元の書類で進め方を確認したい方へ

公正証書があるのに養育費が支払われない場合、まずは手元の公正証書の内容をしっかりと確認することが大切です。強制執行認諾文言の有無、支払期限、相手方の情報、正本の有無、そして時効の状況を把握することで、次に取るべき行動が明確になります。

手元の公正証書で強制執行ができるか、どのような手続きが必要かを確認したい方は、ぜひご相談ください。未払い養育費の相談に限り、24時間受付、何度でも無料で対応しています(返信は内容確認後となります)。
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免責事項
こちらは一般的な情報提供であり、個別の事情に対する法的助言ではありません。取決めの内容、離婚・認知の時期、相手方の状況、手元の書類により、利用できる手続は異なります。個別の期限や効果は弁護士へ確認してください。

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