離婚をするときや、離婚をした後に、子どもの生活を支えるための大切なお金である養育費について、相手としっかりと話し合いができていない場合は少なくありません。当事者同士での話し合いが難しい場合や、相手が話し合いに応じてくれない場合に、裁判所という公的な機関を利用して解決を目指す方法があります。それが「養育費請求調停」です。
こちらでは、養育費の金額や支払方法の取り決めを裁判所で進めるための手続である養育費請求調停について、申立て前に検討したいことや、調停の場で具体的にどのようなことが確認されるのか、そして手続の全体的な流れをやさしく解説します。
先に知る結論:養育費請求調停のポイント
- 養育費請求調停は、家庭裁判所で調停委員を交えて話し合いを行う手続です。
- 相手と直接顔を合わせずに話し合いを進めることができます。
- 調停で合意した内容は「調停調書」となり、支払いが滞った場合に強制執行の手続をとることが可能になります。
- 2026年4月1日以降の離婚・認知で取り決めがない場合、暫定的な「法定養育費」を請求できる可能性があります。
養育費請求調停とはどのような手続か?
養育費請求調停とは、家庭裁判所において、裁判官や調停委員(一般社会の良識を反映させるために選ばれた民間の方々)を交えて、養育費の支払いについて話し合いを行う手続のことです 。
裁判所での話し合いによる解決を目指す方法
調停と聞くと、裁判のように「勝ち負け」を決める厳しい場を想像されるかもしれません。しかし、養育費請求調停はあくまで「話し合い」による解決を目指す手続です。当事者双方が直接顔を合わせて言い争うのではありません。基本的には調停委員が交互に双方から事情や希望を聞き取り、合意点を見出せるように調整を進めてくれます。
そのため、相手と直接話すことに強いストレスを感じる場合や、感情的になってしまって冷静な話し合いができない場合でも安心です。第三者である調停委員が間に入ることで、落ち着いて話し合いを進めることが期待できます。
どのような場合に申立てを検討するとよいか
養育費請求調停の申立てを検討したいのは、主に次のような状況にある場合です。
- 離婚時に養育費の取り決めをしないまま離婚してしまい、後から請求したいが相手が応じない場合
- 相手と直接連絡を取ることが難しい、あるいは連絡先は知っているが返信がない場合
- 当事者同士で話し合いを試みたものの、金額や支払期間についての意見が対立し、まとまらない場合
- 相手が養育費の支払いに消極的な態度をとっている場合
このような状況では、当事者間だけで解決を図ることはとても大変です。家庭裁判所の手続を利用することで、相手も話し合いのテーブルにつきやすくなります。法的な基準に基づいた適切な解決へと進むきっかけになります。
申立て前に確認しておきたいこと
養育費請求調停を申し立てる前に、ご自身の状況を整理し、いくつかの点を確認しておくと安心です。
相手との話し合いが難しい状況かどうかの整理
まず、本当に当事者間での話し合いが難しいのかどうかを振り返ってみましょう。もし、まだ一度も養育費について相手に伝えていないのであれば、まずは手紙やメッセージなどで希望を伝えてみることも一つの方法です。しかし、すでに何度も連絡を無視されていたり、話し合いが平行線をたどっていたりする場合は注意が必要です。これ以上当事者間での交渉に時間をかけるよりも、調停を申し立てた方が早期解決につながる可能性があります。
また、相手の現在の住所や勤務先を把握しているかどうかも大切です。調停を申し立てるためには、相手に裁判所からの書類を送達(正式に届けること)します。もし相手の住所がわからない場合は、戸籍の附票などを取得して調査します。
2026年4月からの新しい制度(法定養育費)との関係
養育費の取り決めがない場合の新しい制度として、2026年4月1日から「法定養育費」の制度が施行されています 。この制度は、2026年4月1日以降に離婚または認知があり、養育費の取り決めがない場合に利用できます。主として子どもを監護する(一緒に生活して世話をする)親が、取り決めができるまでの暫定的な養育費を請求できるというものです 。
法定養育費の金額は、子ども1人につき月額2万円と定められています 。この制度は、養育費の取り決めができるまでの間、あるいは子どもが18歳に達するまでの間の生活を支えるためのものです 。
もし、ご自身の場合がこの法定養育費の要件(2026年4月1日以降の離婚・認知など)に当てはまる場合は、調停で正式な金額が決まるまでの間、この法定養育費を請求できる可能性があります。ただし、法定養育費はあくまで暫定的な最低限の金額です。最終的な養育費の金額や支払方法については、やはり当事者間の合意や調停などでしっかりと取り決めます。
養育費請求調停で確認される主な項目
調停の場では、適切な養育費の金額を算出するために、双方の生活状況について詳しい確認が行われます。具体的には以下のような項目が確認されます。
双方の収入や生活状況の確認
養育費の金額を決める上で最も重要な要素となるのが、申立人(請求する側)と相手方(請求される側)の双方の収入です。調停では、源泉徴収票や給与明細書、確定申告書の控えなどの資料を提出し、現在の収入状況を明らかにします。
また、収入だけでなく、現在の生活状況についても確認されます。例えば、再婚して新しい家族がいるかどうか、他に扶養している子どもがいるかどうか、家賃や住宅ローンの負担がどの程度あるかなど、生活にかかる基本的な事情が考慮されます。
子どもの年齢や生活に必要な費用の確認
子どもの年齢も、養育費の金額に大きく影響します。一般的に、子どもが成長して中学生や高校生になると、食費や教育費などの生活費が多くかかるようになります。そのため、養育費の基準額も高くなる傾向があります。
さらに、子どもに特別な医療費がかかっている場合や、私立学校に通っているための高額な学費がかかっている場合など、特別な事情がある場合には、それらの費用をどのように分担するかも話し合いの対象となります。
支払いの時期や方法についての取り決め
金額だけでなく、いつからいつまで支払うのか、毎月何日にどのような方法で支払うのかといった具体的な条件も確認し、取り決めます。
支払期間については、「子どもが20歳に達する月まで」や「子どもが大学を卒業する年の3月まで」など、状況に応じて設定されます。支払方法については、毎月決まった期日までに、指定した銀行口座に振り込む形とするのが一般的です。
養育費請求調停の流れと進め方
実際に養育費請求調停を利用する場合、どのような流れで手続が進んでいくのかを理解しておきましょう。
家庭裁判所への申立てと必要な準備
まず、相手の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者間で合意した家庭裁判所に、調停の申立書を提出します 。申立てには、申立書のほかに、子どもの戸籍謄本や、申立人の収入を証明する資料(源泉徴収票など)が必要です 。
申立てが受理されると、裁判所から第1回の調停期日(話し合いの日)が指定され、相手にも呼出状が送付されます。
調停期日での話し合いの進み方
調停期日には、申立人と相手がそれぞれ裁判所に赴きます。ただし、待合室は別々に用意されており、調停室には交互に入室して調停委員と話をします。そのため、相手と直接顔を合わせることは原則としてありません。
1回の調停期日は、おおむね2時間程度です。その中で、調停委員が双方の言い分を聞き、解決に向けた提案や調整を行います。1回の期日で話し合いがまとまらない場合は、約1か月から1か月半後に次回の期日が設定され、話し合いを継続します。
話し合いがまとまった場合とまとまらなかった場合
話し合いの結果、双方が養育費の金額や支払方法について合意に至った場合、調停は「成立」となります。合意した内容は「調停調書」という公的な文書にまとめられます。この調停調書は、裁判の判決と同じ強い効力を持っています。もし将来、相手が約束通りに養育費を支払わなくなった場合には、この調停調書を「債務名義(裁判所や公証役場で作られた、差押えを進めるための正式な書類)」として、相手の給与や預金などから強制的に回収を目指す「強制執行」の手続をとることが可能になります。
一方、何度話し合いを重ねても双方が合意できず、これ以上話し合いを続けても解決の見込みがないと判断された場合、調停は「不成立」として終了します。しかし、養育費の請求については、調停が不成立になったからといって手続が終わるわけではありません。調停が不成立になると、自動的に「審判」という手続に移行します。審判では、裁判官が双方から提出された資料やこれまでの事情を総合的に考慮し、適切な養育費の金額や支払方法を決定して命じることになります。
調停をスムーズに進めるための確認表
調停を申し立てる前や、調停の準備を進める際に、以下の確認表を活用して状況を整理しておくとスムーズです。
| 確認項目 | 内容の例・チェックポイント |
|---|---|
| 相手の基本情報 | 現在の住所、連絡先、勤務先を把握しているか |
| 収入に関する資料 | 自身の源泉徴収票、給与明細書、確定申告書などが手元にあるか |
| 子どもの状況 | 子どもの年齢、健康状態、進学の予定や特別な費用の有無 |
| これまでの経緯 | 相手とどのような話し合いをしてきたか、いつから支払いが止まっているか |
| 希望する条件 | 毎月いくら、いつまで、どのような方法で支払ってほしいか |
注意点
調停は話し合いの手続であるため、相手が裁判所からの呼び出しに応じない場合や、話し合いを拒否する場合には、調停を成立させることはできません。その場合は、審判に移行して裁判官の判断を仰ぐことになります。また、再婚、進学、収入変化等の事情変更があっても、養育費が自動的に変更されるとは限りません 。事情によって結論が変わるため、迷ったときは確認してください。
関連する手続や制度について
養育費に関する問題は、状況によって利用すべき手続が異なります。こちらで解説した養育費請求調停以外の関連するテーマについては、以下の記事も参考にしてください。
- 当事者間での取り決めがない状態での対応については、取り決めがない場合の養育費についてをご覧ください。
- 2026年4月施行の新しい制度の詳しい内容については、2026年施行の法定養育費制度についてをご覧ください。
- すでに裁判所での取り決めがあるにもかかわらず支払われない場合の対応については、養育費の履行勧告についてをご覧ください。
相手と直接連絡せず進めたい方へ
養育費請求調停は、ご自身で申し立てて進めることも可能な手続ですが、必要な書類の準備や、調停委員に対してご自身の状況を適切に説明することに不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。専門家に相談することで、相手と直接連絡を取らずに手続を進められるか、また審判に移行した場合の対応などを整理できます。
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こちらは一般的な情報提供であり、個別の事情に対する法的助言ではありません。取決めの内容、離婚・認知の時期、相手の状況、手元の書類により、利用できる手続は異なります。



