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回収手続を知る

相手の勤務先がわからない場合の第三者からの情報取得手続

相手の勤務先がわからない場合の第三者からの情報取得手続の要点をやさしく表したイラスト

養育費の支払いが止まってしまい、相手の勤務先もわからない。何から始めればよいか迷いますよね。転職などで相手の状況がわからなくなっても、諦める必要はありません。日本の法制度には、このような状況で第三者から情報を取得するための手続が用意されています。

こちらでは、裁判所を通じて第三者から情報を取得する手続の考え方や、そのために必要な書類、そして制度の限界について、順番に整理して解説します。

先に知る結論

相手の勤務先がわからない場合、裁判所を通じて市町村や年金事務所から勤務先情報を取得する手続があります。ただし、この手続を利用するには、原則として過去3年以内に財産開示期日が実施されていることなどの要件を満たす必要があります。また、必ず勤務先が判明するわけではなく、情報が得られない場合もあります。

養育費回収の第一歩:相手の財産状況の把握と債務名義

養育費の未払いが発生した場合、回収のためにまず相手(債務者)の財産状況を把握することが大切です。特に、給与からの差押え(強制執行)を検討する場合、相手の勤務先情報が必要になります。

債務名義とは何か

第三者からの情報取得手続を含む強制執行手続を進めるためには、法的に「債務名義」と呼ばれる書類が必要です。債務名義とは、裁判所や公証役場で作られた、差押えを進めるための正式な書類のことです。具体的には、養育費の支払いを命じる判決書、調停調書、審判書、和解調書、または強制執行認諾文言付きの公正証書などが該当します。

債務名義がなければ、養育費の未払いという事実があっても、裁判所は強制執行の手続を開始できません。もし、まだ債務名義を取得していない場合は、家庭裁判所に養育費請求調停を申し立てる、または公正証書の作成を検討するなどして、債務名義を確保することが第一歩です。

第三者からの情報取得手続の具体的な内容と要件

相手の勤務先や預貯金口座がわからない場合に、裁判所を通じてこれらの情報を第三者から取得できる制度があります。この手続は、大きく分けて以下の2種類があり、それぞれ取得できる情報と要件が異なります。これらの手続は、地方裁判所に対して申立てを行うことで開始されます。

1. 市町村・年金事務所からの情報取得手続

この手続では、相手の給与債権に関する情報(現在の勤務先の名称や所在地など)を、市町村や年金事務所から取得できます。市町村は住民税の課税情報から、年金事務所は厚生年金や国民年金の加入記録から勤務先情報を持っている場合があります。

要件: この手続を利用するためには、原則として、相手方について過去3年以内に財産開示期日が実施されていることが要件となります。財産開示期日とは、債務者が裁判所に呼び出され、自身の財産状況を陳述する手続です。

2. 金融機関からの情報取得手続

この手続では、相手の預貯金口座に関する情報を、金融機関から直接取得できます。具体的には、取引のある金融機関の名称、支店名、口座番号、預貯金残高などが含まれます。

要件: こちらも、原則として相手方について過去3年以内に財産開示期日が実施されていることが要件となります。

養育費債権における特例

第三者からの情報取得手続の原則的な要件は「3年以内に財産開示期日が実施されていること」ですが、養育費債権については、この要件が緩和される場合があります。具体的には、債務者が財産開示期日に正当な理由なく出頭しなかったり、出頭しても財産状況を誠実に陳述しなかったりした場合でも、第三者からの情報取得手続を利用できることがあります。

第三者からの情報取得手続の流れと確認手順

第三者からの情報取得手続は、以下のような流れで進めます。

  1. まず、申立ての準備をします: 有効な債務名義があることを確認し、必要書類(申立書、添付書類、収入印紙、郵便切手など)を準備します。
  2. 次に、裁判所へ申立てを行います: 相手の住所地を管轄する地方裁判所に申立てを行います。
  3. ここで確認、裁判所による調査嘱託が行われます: 申立てが認められると、裁判所は市町村、年金事務所、または金融機関に対し、相手の財産に関する情報の提供を嘱託します。
  4. 最後に、情報の取得と開示が行われます: 嘱託を受けた第三者機関は、保有する情報を裁判所に回答し、その情報が申立人に開示されます。

制度の限界と注意点

第三者からの情報取得手続を利用するにあたっては、以下の点に注意が必要です。事情によって結論が変わるため、迷ったときは確認してください。

  • 情報の確実性ではない: この手続は、相手の勤務先や口座が必ず判明する制度ではありません。相手が退職している場合や、情報が登録されていない場合など、情報が取得できない可能性もあります。
  • 時間と費用: 手続には一定の時間と費用がかかります。情報が得られなかった場合でも、申立てにかかった費用は戻ってきません。
  • 情報取得後の対応: 情報を取得しただけでは養育費は回収されません。取得した情報をもとに、給与差押えや預貯金差押えといった強制執行の手続を別途行う必要があります。給与差押えは原則として手取額の2分の1まで可能であり、手取額が月66万円を超える場合は33万円を除いた額が上限となります。
  • 時効について: 養育費の請求権には時効があります。当事者間で支払時期・金額を取り決めた場合は各不払い・滞納発生から5年、家庭裁判所での調停・審判・裁判で決めた場合は10年とされています。公正証書であっても当事者間協議による取決めなら5年となります。

財産開示手続と第三者からの情報取得手続の比較

項目 財産開示手続 第三者からの情報取得手続
目的 債務者自身に財産状況を陳述させる 第三者から債務者の財産情報を取得する
申立先 地方裁判所 地方裁判所
主な情報源 債務者本人 市町村、年金事務所、金融機関
原則的要件 債務名義があること 債務名義があり、原則3年以内に財産開示期日が実施されていること
養育費債権の特例 なし 財産開示期日不履行の場合でも利用できることがある
得られる情報 債務者の陳述による財産全般 勤務先、預貯金口座など特定の情報

2026年4月1日施行の法改正について

2026年4月1日には、民法改正により、離婚後の子の養育に関する制度が見直されます。具体的には、2026年4月1日以降に離婚または認知があり、養育費の取決めがない場合に、主として子を監護する親が、取決めができるまでの暫定的な養育費を請求できる制度が導入されます。この法定養育費は、子1人につき月額2万円と定められています。

相談前にメモしておくとスムーズなこと

勤務先がわからないときは、情報が少ないこと自体を気にしすぎなくて大丈夫です。まずは、今わかっている範囲をメモしておくと、使える手続を整理しやすくなります。

  • 養育費を決めた書類の名前と、手元に原本があるか
  • 最後に支払いがあった月と、その後の未払い額
  • 相手の現在の住所や、以前の勤務先について知っていること
  • これまでに相手へ連絡した方法と、返事の有無
  • 財産開示手続を利用したことがあるか、裁判所から届いた書類があるか

すべて揃っていなくても相談はできます。書類の名称がわからない場合は、スマートフォンで表紙や最初のページを撮影しておく方法もあります。個人情報が含まれるため、送信先が正式な相談窓口であることを確認してから共有してください。

勤務先情報が得られた後は、給与差押えへ進めるかを別に確認します。勤務先が見つからなかった場合も、預金口座の情報取得やほかの回収方法を検討できることがあります。最初から方法を一つに決めず、手元の書類と相手の状況を見ながら順番に考えることが大切です。

相手の勤務先がわからずお困りの方へ

手元の書類でどの方法を選べるか、今の状況からどのように手続を進められるか、まずは一緒に整理してみませんか。未払い養育費の相談に限り、24時間受付、何度でも無料でご相談いただけます。返信は内容確認後となりますが、お気軽にご連絡ください。

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こちらは一般的な情報提供であり、個別の事情に対する法的助言ではありません。取決めの内容、離婚・認知の時期、相手方の状況、手元の書類により、利用できる手続は異なります。個別の期限や効果は弁護士へご確認ください。

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